フレイル改善予測における身体機能評価の有効性検証

n=75 | データソース: n75.xlsm | 解析日: 2026-03-27

研究の焦点

フレイルの判定に関わらない身体機能評価(5回立ち座り、2STEP値、長座体前屈、片脚立位時間)が、 フレイル改善の予測(対象者選定)に有効に作用するかを、ロジスティック回帰・GAM・CARTの3手法で検証する。

J-CHS基準の5項目(体重減少、疲労感、運動習慣、握力、歩行速度)はフレイル判定に使用される従属変数側であり、 本解析の独立変数には含めない(循環論法の回避)。ただし、フレイル得点は調整変数として使用する。

Phase 1: 記述統計

対象者の基本属性

75
対象者数
78.1
平均年齢 (SD 5.4)
53/22
女性/男性
23.8
平均BMI

フレイル改善の分布

14
改善 (18.7%)
56
維持 (74.7%)
5
悪化 (6.7%)

フレイル得点の変化

初回: 2.21 ± 1.04 → 最終: 1.93 ± 0.91

Wilcoxon符号順位検定: p=0.0186, Cohen's d = -0.290

J-CHS 5構成要素の初回該当率と改善率

項目初回該当該当者中の改善
体重減少 16名 (21.3%) 13名 (81.2%)
疲労感 19名 (25.3%) 11名 (57.9%)
運動習慣低下 27名 (36.0%) 17名 (63.0%)
握力低下(右) 36名 (48.0%) 0名 (0.0%)
握力低下(左) 36名 (48.0%) 0名 (0.0%)
歩行速度低下 68名 (90.7%) 1名 (1.5%)

主観項目: 該当62名中 改善41名 (66.1%) / 客観項目: 該当104名中 改善1名 (1.0%)
Fisherの正確検定: p=0.0000

フレイル判定に関わらない身体機能評価(初回値)

変数平均SD中央値範囲
5回立ち座り(秒) 13.79 4.78 12.78 6.69 - 29.87
2STEP値 0.95 0.16 0.93 0.62 - 1.48
長座体前屈(cm) 26.83 10.19 26.00 3.50 - 55.50
片脚立位max(秒) 20.08 18.95 13.00 1.02 - 60.00

Phase 2: ロジスティック回帰分析

2A: 単変量ロジスティック回帰(フレイル改善予測)

変数OR95% CIp値
初回フレイル得点 4.545 [2.036, 10.147] 0.0002 ***
性別(男性) 0.147 [0.018, 1.198] 0.0732 *
初回転倒恐怖 0.492 [0.205, 1.176] 0.1107 +
初回長座体前屈 [身体機能] 1.048 [0.986, 1.114] 0.1282 +
通所回数 0.914 [0.749, 1.116] 0.3779
初回2STEP値 [身体機能] 0.242 [0.006, 10.346] 0.4589
初回片脚立位max [身体機能] 0.991 [0.958, 1.024] 0.5770
初回転倒歴 0.828 [0.256, 2.671] 0.7516
BMI 1.027 [0.870, 1.212] 0.7565
初回主観的健康感 0.916 [0.514, 1.633] 0.7664
初回5回立ち座り [身体機能] 0.987 [0.871, 1.118] 0.8361
年齢 0.992 [0.891, 1.106] 0.8901
初回多剤服用 0.945 [0.281, 3.182] 0.9272

青背景 = フレイル判定に関わらない身体機能評価
***: p<0.01, **: p<0.05, *: p<0.1, +: p<0.2

フォレストプロット

2B: 多変量ロジスティック回帰

p<0.2の変数を投入(VIF>5の変数は除外)

変数OR95% CIp値
初回長座体前屈 [身体機能] 1.016 [0.945, 1.092] 0.6667
性別(男性) 0.109 [0.007, 1.600] 0.1059
初回フレイル得点 4.177 [1.839, 9.486] 0.0006 ***
初回転倒恐怖 0.693 [0.232, 2.071] 0.5115

AUC = 0.8899, 感度 = 0.929, 特異度 = 0.869

Hosmer-Lemeshow: χ2=12.568, p=0.1276

ROC曲線

2C: フレイル得点調整後の身体機能評価の追加的予測力

ベースモデル(フレイル得点のみ): AUC = 0.8893

モデルAUCAUC差尤度比検定 p値
フレイル得点のみ(ベース)0.8893------
フレイル得点 + 5回立ち座り 0.8981 +0.0088 0.2941
フレイル得点 + 2STEP値 0.9005 +0.0111 0.2549
フレイル得点 + 長座体前屈 0.9122 +0.0228 0.4510
フレイル得点 + 片脚立位max 0.8940 +0.0047 0.9426
フレイル得点 + 身体機能4変数 0.9157 +0.0263 0.3233 (非有意)

尤度比検定: 身体機能4変数の同時追加による予測力の改善を検定
LR統計量 = 4.666, df = 4, p = 0.3233

Phase 3: GAM / 非線形パターン検出

身体機能評価 → フレイル得点変化量

変数手法p値判定
5回立ち座り GAM 0.1569 非有意
2STEP値 GAM 0.1196 非有意
長座体前屈 GAM 0.4955 非有意
片脚立位max GAM 0.4049 非有意
GAM非線形プロット

CART: 閾値推定と特徴量重要度

分類CART(フレイル改善予測、max_depth=3)と回帰CART(フレイル得点変化量、max_depth=2)

CART特徴量重要度

決定木ルール(分類CART)

|--- 長座体前屈 <= 31.50
|   |--- 片脚立位max <= 4.51
|   |   |--- 片脚立位max <= 3.00
|   |   |   |--- class: 0
|   |   |--- 片脚立位max >  3.00
|   |   |   |--- class: 0
|   |--- 片脚立位max >  4.51
|   |   |--- 5回立ち座り <= 14.44
|   |   |   |--- class: 0
|   |   |--- 5回立ち座り >  14.44
|   |   |   |--- class: 0
|--- 長座体前屈 >  31.50
|   |--- 2STEP値 <= 0.88
|   |   |--- class: 1
|   |--- 2STEP値 >  0.88
|   |   |--- 長座体前屈 <= 36.80
|   |   |   |--- class: 0
|   |   |--- 長座体前屈 >  36.80
|   |   |   |--- class: 0

決定木ルール(回帰CART: フレイル得点変化量)

|--- 長座体前屈 <= 23.75
|   |--- 長座体前屈 <= 13.76
|   |   |--- value: [-0.50]
|   |--- 長座体前屈 >  13.76
|   |   |--- value: [0.17]
|--- 長座体前屈 >  23.75
|   |--- 2STEP値 <= 1.01
|   |   |--- value: [-0.31]
|   |--- 2STEP値 >  1.01
|   |   |--- value: [-0.76]

Phase 4: 結果の統合

フレイル判定に関わらない身体機能評価の有効性

身体機能評価J-CHS関与単変量OR(p) 多変量で独立GAM(p)CART重要度対象者選定有効性
5回立ち座り No OR=0.99 (p=0.836) 除外(VIF) p=0.157 0.064 限定的
2STEP値 No OR=0.24 (p=0.459) 除外(VIF) p=0.120 0.190 部分的 (CART重要)
長座体前屈 No OR=1.05 (p=0.128) No (p=0.667) p=0.495 0.540 部分的 (CART重要)
片脚立位max No OR=0.99 (p=0.577) 除外(VIF) p=0.405 0.207 部分的 (CART重要)

総合判定

5回立ち座りは限定的、2STEP値は補助的に活用可能、長座体前屈は補助的に活用可能、片脚立位maxは補助的に活用可能

臨床的意義

限界

統計ソフト: Python (scipy, statsmodels, scikit-learn, pygam)
有意水準: p < 0.05(両側検定)、多重比較補正は適用していない