フレイル改善解析 v2: 身体機能評価の対象者選定有効性検証

解析日: 2026-03-27 | データ: n75.xlsm | 研究デザイン: 前後比較(通所リハ)

75
対象者数
14.7%
改善率 (11/75)
p=.018
フレイル得点変化
p=.084
身体機能追加予測力
核心的知見: フレイル判定に関わらない身体機能4変数は、単独でのフレイル改善予測力は限定的。 しかしCART分析により長座体前屈と5回立ち座りの組み合わせが対象者スクリーニングに有用な閾値を提供する可能性が示唆された。

データ概要

基本属性

項目
年齢78.2 ± 5.3 歳 (60-91)
性別女性 53人 (70.7%) / 男性 22人 (29.3%)
BMI23.4 ± 3.9
通所回数9.9 ± 2.6 回
欠損値なし

フレイル改善の分布

区分人数割合備考
改善1013.3%1段階改善
2段階改善11.3%フレイル→ロバスト (ID=33)
維持5877.3%
悪化68.0%
改善群合計1114.7%解析上の改善群

2段階改善(値=2)は改善群に含めて二値化(改善 vs 非改善)

Phase 1: 記述統計

フレイル得点の変化

時点平均 ± SD検定
初回1.73 ± 0.88 Wilcoxon W=201.0
p=.018
効果量 r=0.274 (小〜中)
最終1.44 ± 0.74

Wilcoxon符号順位検定を使用(対応のあるデータ、正規性の仮定不要)

J-CHS 5構成要素の初回該当率と改善率

要素初回該当最終該当改善率
体重減少16/75 (21.3%)12/75 (16.0%)81.2%
疲労感18/75 (24.0%)12/75 (16.0%)55.6%
運動習慣低下28/75 (37.3%)12/75 (16.0%)64.3%
握力低下28/75 (37.3%)22/75 (29.3%)35.7%
歩行速度低下68/75 (90.7%)72/75 (96.0%)2.9%

改善率 = 初回該当者のうち最終で非該当になった割合。握力基準: 男性<28kg, 女性<18kg。歩行速度基準: <1.0 m/s。

主観的 vs 客観的構成要素の改善率

カテゴリ改善/該当改善率
主観的(体重減少/疲労感/運動習慣)41/6266.1%
客観的(握力/歩行速度)12/9612.5%
Fisher正確検定OR=13.67, p<.001
主観的項目は客観的項目より約5倍改善しやすい。フレイル改善の多くは主観的項目の改善に起因しており、身体機能の客観的改善は限定的。

Phase 2: ロジスティック回帰

2A: 単変量スクリーニング

変数カテゴリOR95% CIp値
初回5回立ち座り(秒) 身体機能 0.9930.866 - 1.138 0.918
初回2STEP値 身体機能 完全分離により推定不安定
初回長座体前屈(cm) 身体機能 1.0420.976 - 1.113 0.217
初回片脚立位max(秒) 身体機能 0.9920.955 - 1.029 0.658
年齢 属性 1.1250.981 - 1.289 0.091+
性別 属性 0.4890.097 - 2.472 0.387
BMI 属性 0.9390.784 - 1.125 0.496
通所回数 属性 0.8390.678 - 1.038 0.106+
主観的健康感 属性 0.6730.346 - 1.308 0.243
転倒恐怖 属性 0.4730.177 - 1.266 0.136+
転倒歴 属性 0.9440.261 - 3.412 0.931
多剤服用 属性 1.3970.336 - 5.800 0.645
初回フレイル得点 フレイル 完全分離(n=11中の改善群集中)により推定不安定

+ p<0.2 (多変量モデル候補)。フレイル得点と2STEP値は完全分離(quasi-complete separation)のため 通常のロジスティック回帰では推定が不安定。Firth補正やペナルティ付き回帰が必要。

身体機能4変数は単変量で全て非有意。 OR値もいずれも1に近く、個々の身体機能単独ではフレイル改善を予測できない。

2B: 多変量モデル (p<0.2の変数)

変数OR95% CIp値
年齢1.1320.977 - 1.3110.099+
通所回数0.8290.661 - 1.0400.105
転倒恐怖0.5130.197 - 1.3400.173

AIC=62.5, McFadden R2=0.128, VIF全て1.00(多重共線性なし)

身体機能4変数はいずれもp≥0.2のため多変量モデルに選択されず

2C: 尤度比検定 — 身体機能の追加的予測力

モデル変数AICLog-L
ベースフレイル得点のみ16.9-6.4
フルフレイル得点 + 身体機能4変数16.3-3.1
尤度比検定 χ2=6.64, df=3, p=0.084
p=0.084で統計的有意水準(p<0.05)には達しないが、AICはフルモデルがわずかに良好。 n=75の検出力の限界を考慮すると、身体機能の追加的予測力を完全に否定はできない。

フレイル得点の完全分離問題により、両モデルとも推定の安定性に限界あり。 df=3(2STEP値が完全分離でパラメータ推定されず実質3変数)。

Phase 3: GAM + CART

GAM: 非線形パターン検出

変数GAM p値AIC判定
初回5回立ち座り(秒)p<.00161.4非線形関係あり
初回2STEP値p<.00164.5非線形関係あり
初回長座体前屈(cm)p=.49465.5
初回片脚立位max(秒)p=.32865.6

LogisticGAM (n_splines=8)。5回立ち座りと2STEPでフレイル改善確率との非線形関係を検出。 線形回帰(Phase 2)で非有意だった変数がGAMで有意になったことは、U字型や閾値効果の存在を示唆。

CART: 決定木による閾値推定 (max_depth=2)

長座体前屈 ≤ 32.75cm ├── 5回立ち座り ≤ 12.99秒 → 非改善 └── 5回立ち座り > 12.99秒 → 改善 長座体前屈 > 32.75cm ├── ≤ 38.25cm → 改善 └── > 38.25cm → 非改善
特徴量重要度CART閾値
長座体前屈0.59032.75 / 38.25 cm
5回立ち座り0.41012.99 秒
2STEP値0.000
片脚立位max0.000
CARTの解釈: 長座体前屈が中程度(32.75〜38.25cm)の範囲にある、または体前屈が低値でかつ5回立ち座りが13秒超(遅い)対象者で改善しやすい傾向。 これは「機能低下が中等度の範囲にある対象者に改善余地がある」という臨床的仮説と整合。

Phase 4: 統合判定表

身体機能評価 J-CHS関与 単変量OR (p) 多変量独立 GAM (p) CART閾値 有効性判定
5回立ち座り No 0.99 (p=.918) No p<.001 13.0秒 部分的有効
2STEP値 No 推定不安定 No p<.001 限定的
長座体前屈 No 1.04 (p=.217) No p=.494 32.8 / 38.3cm 限定的
片脚立位max No 0.99 (p=.658) p=.328 不十分

有効性判定基準: 4手法中3つ以上で有意/関連 → 有効、2つ → 部分的有効、1つ → 限定的、0 → 不十分

総合考察

結論

  1. 身体機能4変数は単独ではフレイル改善を有意に予測しない。 線形のロジスティック回帰では全て非有意(p>0.2)。
  2. GAMにより5回立ち座りと2STEP値に非線形関係を検出。 線形モデルでは見逃される閾値効果やU字型パターンが存在する可能性。
  3. CARTでは長座体前屈と5回立ち座りの組み合わせが選定基準として有望。 「長座体前屈33〜38cm」かつ「5回立ち座り13秒超」が改善群のプロファイル。
  4. フレイル改善の主要因は主観的項目(運動習慣/疲労感/体重減少)の改善。 客観的項目(握力/歩行速度)の改善率は12.5%に留まる。

限界

臨床的示唆

現時点では、身体機能評価を単独の対象者選定基準として採用するエビデンスは不十分。 ただし、長座体前屈と5回立ち座りの組み合わせは予備的スクリーニング指標としての可能性があり、 より大きなサンプル(n≥200)での検証が推奨される。