リハビリ・介護予防の現場で「成功する組み合わせ」を見つける方法
QCA = Qualitative Comparative Analysis(質的比較分析)
ひとことで言うと、「うまくいくパターン(条件の組み合わせ)を見つける方法」です。
普通の統計(回帰分析など)は「Aが増えるとBも増える」という1対1の関係を調べます。でもQCAは違います。
「美味しいカレーを作る条件」を考えてみましょう。
どちらも「美味しい」という同じ結果。でもたどり着く道(レシピ)が違う。
QCAはこういう「複数の成功パターン」を見つけます。
同じ結果にたどり着く道は複数ある。
1つの条件だけでは結果は決まらない。組み合わせが大事。
「成功の条件」と「失敗の条件」は裏返しではない。
(社会参加+家族支援という別ルートで成功するかもしれない)
各条件を「ある(1)」か「ない(0)」に変換します。
| 利用者 | A: 運動習慣 | B: 仲間 | C: 自己効力感 | D: 場所 | Y: 継続 |
|---|---|---|---|---|---|
| 田中さん | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
| 鈴木さん | 0 | 1 | 1 | 1 | 1 |
| 佐藤さん | 1 | 0 | 1 | 0 | 1 |
| 山田さん | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 |
| 中村さん | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 |
| 小林さん | 1 | 1 | 0 | 0 | 0 |
※ 実際はもっと多くの事例を集めます(10〜50件程度)
継続(Y=1)の行だけを取り出して観察します。
| パターン | A: 運動 | B: 仲間 | C: 効力感 | D: 場所 | Y |
|---|---|---|---|---|---|
| パターン1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 |
| パターン2 | 0 | 1 | 1 | 1 | 1 |
| パターン3 | 1 | 0 | 1 | 0 | 1 |
成功パターンをブール代数(論理式)で書きます。
「*」= AND(かつ)、「+」= OR(または)、小文字 = 「ない」
簡略化前:
パターン1と2を比較すると、Aがあってもなくても「B*C*D」で成功しています。よってAは不要:
簡略化後:
仲間がいて、自信があって、近くに場所があれば、元々の運動習慣がなくても続けられる
元々の運動習慣があり自信もある人は、仲間や場所がなくても自力で続けられる
| 種類 | データの形 | 使い分け |
|---|---|---|
| csQCA crisp-set |
0 か 1 (あり/なし) |
条件が「Yes/No」で分けられるとき 例: 運動習慣あり/なし |
| fsQCA fuzzy-set |
0〜1の連続値 (程度あり) |
条件に「程度」があるとき 例: 自己効力感スコア 0.3, 0.7… |
| mvQCA multi-value |
0, 1, 2… (複数カテゴリ) |
3段階以上に分けたいとき 例: 介護度(軽/中/重) |
リハビリ研究では fsQCA がよく使われます(評価スコアに程度があるため)
「この組み合わせが揃ったとき、どのくらい確実に結果が出るか」
目安: 0.80以上で信頼できる
例: 「仲間+効力感+場所」の一貫性が0.92 → この組み合わせの92%が運動を継続
「この組み合わせで、全成功事例のうちどのくらいをカバーしているか」
目安: 0.40以上で実用的
例: 経路1のカバレッジが0.65 → 運動継続者の65%がこのパターンに該当
| ツール | 特徴 | 費用 |
|---|---|---|
| fsQCA 3.0 | QCA専用ソフト、GUIあり | 無料 |
| R: QCA パッケージ | 再現性が高い、スクリプトで管理 | 無料 |
| TOSMANA | mvQCA向け、視覚的 | 無料 |
R の QCA パッケージが学術論文での報告に最も適しています
| 介護予防の課題 | QCAでできること |
|---|---|
| 施設・事例数が少ない | 10〜50件で分析可能 |
| 成功要因が複合的 | 条件の「組み合わせ」を発見 |
| 利用者の背景が多様 | 複数の成功パターンを提示 |
| 画一的な支援の限界 | タイプ別支援の根拠を提供 |
[AI-Structure] この資料はQCAの教科書的知見をリハビリ・介護予防の文脈で再構成したものです
作成日: 2026-03-27