QCA(質的比較分析)を図解で理解する

リハビリ・介護予防の現場で「成功する組み合わせ」を見つける方法

1. QCAってなに?

QCA = Qualitative Comparative Analysis(質的比較分析)

ひとことで言うと、「うまくいくパターン(条件の組み合わせ)を見つける方法」です。

普通の統計(回帰分析など)は「Aが増えるとBも増える」という1対1の関係を調べます。でもQCAは違います。

QCAの発想
「原因は1つじゃない。いくつかの条件が組み合わさって結果が生まれる」
しかも「同じ結果にたどり着く道は複数ある

料理でたとえると

「美味しいカレーを作る条件」を考えてみましょう。

どちらも「美味しい」という同じ結果。でもたどり着く道(レシピ)が違う
QCAはこういう「複数の成功パターン」を見つけます。

2. 普通の統計とどう違う?

手法
回帰分析
考え方
A → B(1対1)
サンプル数
多いほど良い
手法
QCA
考え方
A+B+C → D(組合せ)
サンプル数
10〜50程度でOK
QCAが向いている場面
・ 事例数が少ない(施設数10〜40など)
・ 「どの条件が組み合わさると成功するか」を知りたい
・ 成功パターンが1つとは限らない

3. QCAの3つのキーワード

① 等結果性(Equifinality)

同じ結果にたどり着く道は複数ある

運動 + 栄養改善 自立度UP
または
社会参加 + 家族支援 自立度UP

② 結合的因果(Conjunctural Causation)

1つの条件だけでは結果は決まらない。組み合わせが大事。

運動だけ ? (必ず成功するとは限らない)
運動 + 栄養改善 + 週2以上 成功!

③ 非対称性(Asymmetry)

「成功の条件」と「失敗の条件」は裏返しではない

運動 + 栄養 成功
運動なし + 栄養なし 必ず失敗…とは限らない

(社会参加+家族支援という別ルートで成功するかもしれない)

4. リハビリ・介護予防での具体例

テーマ: 「介護予防教室の卒業後も自主的に運動を続ける人は、どんな条件の組み合わせを持っているか?」

条件(原因側)の設定

A: 運動習慣
教室参加前から週1以上の運動をしていた
B: 仲間の存在
教室で一緒に運動する仲間ができた
C: 自己効力感
「自分でもできる」という自信がある
D: 近所に運動場所
徒歩圏内に体操教室や公園がある

結果(アウトカム)

Y: 卒業後6ヶ月時点で週1以上の運動を継続している

5. QCA分析の手順(5ステップ)

1条件と結果を決める
2データを0/1に変換する
3真理値表を作る
4論理式を簡略化する
5結果を解釈する

2 データを0/1に変換する(crisp-set QCA の場合)

各条件を「ある(1)」か「ない(0)」に変換します。

利用者A: 運動習慣B: 仲間C: 自己効力感D: 場所Y: 継続
田中さん11111
鈴木さん01111
佐藤さん10101
山田さん01010
中村さん00010
小林さん11000

※ 実際はもっと多くの事例を集めます(10〜50件程度)

3 真理値表から「成功パターン」を見つける

継続(Y=1)の行だけを取り出して観察します。

パターンA: 運動B: 仲間C: 効力感D: 場所Y
パターン111111
パターン201111
パターン310101

4 論理式で表す → 簡略化する

成功パターンをブール代数(論理式)で書きます。

「*」= AND(かつ)、「+」= OR(または)、小文字 = 「ない」

簡略化前:

A*B*C*D + a*B*C*D + A*b*C*d

パターン1と2を比較すると、Aがあってもなくても「B*C*D」で成功しています。よってAは不要:

簡略化後:

B*C*D + A*C

5 結果を日本語で解釈する

発見された2つの成功パターン

経路1: 仲間 + 自己効力感 + 場所 運動継続

仲間がいて、自信があって、近くに場所があれば、元々の運動習慣がなくても続けられる

経路2: 運動習慣 + 自己効力感 運動継続

元々の運動習慣があり自信もある人は、仲間や場所がなくても自力で続けられる

現場への示唆
・ 運動習慣のない人には → 仲間づくり + 通いやすい場所の確保が重要
・ 運動習慣のある人には → 自己効力感を維持する声かけで十分
・ 「全員に同じ支援」ではなく、タイプ別の支援が設計できる

6. QCAには3種類ある

種類データの形使い分け
csQCA
crisp-set
0 か 1
(あり/なし)
条件が「Yes/No」で分けられるとき
例: 運動習慣あり/なし
fsQCA
fuzzy-set
0〜1の連続値
(程度あり)
条件に「程度」があるとき
例: 自己効力感スコア 0.3, 0.7…
mvQCA
multi-value
0, 1, 2…
(複数カテゴリ)
3段階以上に分けたいとき
例: 介護度(軽/中/重)

リハビリ研究では fsQCA がよく使われます(評価スコアに程度があるため)

7. 結果の良し悪しを判断する2つの指標

Consistency(一貫性)

「この組み合わせが揃ったとき、どのくらい確実に結果が出るか」

目安: 0.80以上で信頼できる

例: 「仲間+効力感+場所」の一貫性が0.92 → この組み合わせの92%が運動を継続

Coverage(被覆度)

「この組み合わせで、全成功事例のうちどのくらいをカバーしているか」

目安: 0.40以上で実用的

例: 経路1のカバレッジが0.65 → 運動継続者の65%がこのパターンに該当

8. QCAを実施するためのツール

ツール特徴費用
fsQCA 3.0QCA専用ソフト、GUIあり無料
R: QCA パッケージ再現性が高い、スクリプトで管理無料
TOSMANAmvQCA向け、視覚的無料

R の QCA パッケージが学術論文での報告に最も適しています

9. まとめ: QCAが介護予防で役立つ理由

介護予防の課題QCAでできること
施設・事例数が少ない10〜50件で分析可能
成功要因が複合的条件の「組み合わせ」を発見
利用者の背景が多様複数の成功パターンを提示
画一的な支援の限界タイプ別支援の根拠を提供
QCA一言まとめ
「少ない事例から、成功する条件の組み合わせパターンを見つけ出し、タイプ別の支援を科学的に設計できる手法」

[AI-Structure] この資料はQCAの教科書的知見をリハビリ・介護予防の文脈で再構成したものです
作成日: 2026-03-27