総合事業における守秘義務と
個人情報のブラインド処理

事例検討・情報共有時の個人情報保護ガイド

1. なぜブラインド処理が必要か

介護予防・日常生活支援総合事業(以下「総合事業」)において、事例検討や多職種連携の場で利用者情報を共有する際は、 個人を特定できないよう匿名化(ブラインド処理)を行うことが法律で求められています。

違反時の罰則
守秘義務違反は 1年以下の懲役 または 50万円以下の罰金(介護保険法)。 個人情報保護法違反は行政処分(是正勧告・命令)、命令違反には 1年以下の懲役 または 100万円以下の罰金
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退職後も適用
守秘義務は在職中だけでなく、退職後も継続して適用されます。業務で知り得た秘密は退職後も漏らしてはなりません。

2. 守秘義務の法的根拠

個人情報保護法

個人情報取扱事業者の義務として、利用目的の特定・制限、安全管理措置、第三者提供の制限等を規定。2025年改正で罰則強化。

介護保険法

介護支援専門員等は、正当な理由なしに業務上知り得た秘密を漏らしてはならない(第69条の37等)。

運営基準(厚生労働省令)

指定介護予防サービス等の運営基準において、従業者の守秘義務及び退職後の秘密保持を規定。

各専門職の個別法

社会福祉士及び介護福祉士法、理学療法士及び作業療法士法、保健師助産師看護師法など、各資格法で守秘義務を規定。

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参考ガイドライン
「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」(個人情報保護委員会・厚生労働省)

3. ブラインド処理が必要な項目一覧

以下の情報は、事例検討や資料作成時に必ずブラインド処理を行ってください。

区分 項目 ブラインド方法 記載例
必須 氏名 イニシャル、仮名、またはアルファベット記号に置換 「A氏」「Bさん」
住所 市区町村レベルまでに省略、または「X市Y町」等 「○○市内」
生年月日 年齢のみ記載、または年代に変換 「80代前半」
電話番号・連絡先 完全に削除 記載しない
介護保険被保険者番号 完全に削除 記載しない
要注意 家族構成・家族の氏名 続柄のみ記載、家族も仮名化 「長男(同居)」
かかりつけ医・医療機関名 固有名詞を伏せ、診療科・規模のみ 「近隣の内科クリニック」
利用サービス事業所名 サービス種別のみ記載 「通所型サービスA」
居住環境の詳細 特定につながる情報を削除 「戸建て・2階建て」
配慮 顔写真・外見の特徴 写真使用時は目元をマスキング、または使用しない 写真不使用を推奨
職歴・経歴 業種・職種レベルに一般化 「元会社員」
趣味・嗜好の詳細 特定につながる場合は一般化 「散歩が好き」
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注意:間接的な特定
上記項目を個別に処理しても、複数の情報を組み合わせると個人が特定される場合があります。 「80代・独居・○○町在住・元教員」など、組み合わせでの特定リスクにも注意してください。

4. ブラインド処理の具体例(Before / After)

事例概要の記載例

❌ ブラインドなし

田中花子さん(82歳、川崎市高津区溝口2-1-1在住)。長男の田中太郎さん(55歳)と二人暮らし。 かかりつけ医は溝口駅前の山田内科。要支援1。通所型サービスCの「ふれあい健康教室」を週2回利用中。

✓ ブラインド済み

A氏(80代前半・女性、B市内在住)。長男(50代)と二人暮らし。 かかりつけ医は自宅近隣の内科クリニック。要支援1。通所型サービスCを週2回利用中。

サービス担当者会議の記録例

❌ ブラインドなし

鈴木一郎さんの担当者会議。訪問介護のケアワーク横浜の佐藤さんから報告。 鈴木さんは横浜市港北区の市営住宅にお住まい。

✓ ブラインド済み

C氏の担当者会議。訪問介護事業所の担当者から報告。 C氏はD市内の集合住宅にお住まい。

5. 場面別の情報取扱いルール

場面 ブラインド要否 補足
事業所内カンファレンス 原則不要(関係者限定) ただし記録文書を外部に持ち出す場合はブラインド必須
地域ケア会議 必須 多機関参加のため、必ず匿名化。市区町村の個人情報保護条例に基づく
事例検討会・研修 必須 本人同意がない場合は匿名化が必要。同意がある場合も最小限の開示に
学会発表・論文 必須+同意 匿名化に加え、十分な匿名化が困難な場合は本人の書面同意が必要
電子メール・FAX 必須 誤送信リスクあり。ブラインド処理済み文書のみ送信
口頭での多職種相談 実名使用は関係者間のみ 周囲に第三者がいないか確認。公共の場での相談は不可

6. 事例検討時チェックリスト

資料配付・発表の前に、以下を確認してください。

資料作成時

配付・共有時

7. まとめ:3つの原則

原則1:必要最小限の情報開示
事例検討の目的に必要な情報のみを共有する。「なくても議論できる情報」は開示しない。
原則2:個人を特定できない状態にする
氏名・住所・生年月日等を匿名化し、情報の組み合わせでも特定されないよう配慮する。
原則3:資料の適切な管理と廃棄
配付資料は回収・シュレッダー処理。電子データはパスワード保護。退職者からの資料回収も徹底する。